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「古賀さん、こいつらに付き合ってると大酒飲みになっちゃうから、気を付けた方がいいよ」
「島田さん! 失礼なこと、言わないでくださいよ」
「そうですよ。私たちは健全に出会いを求めてるんですよ!」
圭の向かいに座っていた女性が、私と島田さんの間に強引に場所を取った。
「島田さんはずーーーっと気楽なお一人様を楽しんだらいいんですよ。私たちはずーーーっと一緒にいてくれる恋人を見つけるんですから」と言って、私の腕に身体を寄せる。
バニラの甘い香りがした。
「はいはい。気楽なおっさんは退散しますよ」と言うと、島田さんは立ち上がった。
「飲み過ぎるなよ」
そう言った島田さんの彼女を見る目が気になった。
あ、この二人……。
「私はメディアデザイン部の久保若葉。よろしくね」
「はい。よろしくお願いします」
「私と未希さんと奈津さんは合コン仲間なの。ね、伊織ちゃんて呼んでもいい? 私のことも名前で呼んでね」
「は……い」
「仲良くしよーね! あ、私より先に彼氏が出来ても苛めたりしないから、安心してね」
若菜さんは二十七歳で、二年前にテレビ局の編成局からSHIINAに転職してきた。
柔らかいパーマのかかった髪は腰まで長く、小顔で幼く見える彼女にとても似合っていた。
可愛い人だなぁ……。
私にはない女性らしさや愛嬌が、素直に可愛いと思った。
「恋人探しもいいけど、営業も忘れずにね」
いつの間にか、私の正面には蓮兄ではなく副社長が座っていた。
「綾香さんも行きませんか? 合コン」と、若葉さん。
「たまにはいいわね」と、副社長が笑った。
「ダメよ、若葉。綾香さんに根こそぎ持ってかれちゃう」
すかさず、西岡さんが言う。
「あら、人聞きの悪いこと言わないでよ。一番いい男一人でいいわ」
すごい自信……。
副社長は、腰まである黒髪と唇の左下に艶黒子が印象的な美人で、パンツスーツがスタイルの良さを際立たせている。
噂には聞いていたけど、この会社って色々ハードル高い……。
仕事とはいえ、自分がやけに場違いな気がして、私は眼鏡のグリップをグイッと上げた。
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