Mission 1 最悪の再会

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 二時間後、居酒屋を出た私たちは数人を除いてBarに場所を移すことになった。Barまで歩いて十分ほどらしい。 「疲れた顔してるな」  気がつくと蓮兄が隣を歩いていた。  前を歩く西岡さんと三浦さんは楽しそうに話をしていた。その前に圭がいた。服飾部の女性と並んで。 「飲み過ぎてないか?」 「大丈夫」 「合コン……行くのか?」と、蓮兄が少し寂しそうに聞いた。 「仕事ですから」 「なら、合コンの日時と場所は報告するように」 「過保護」 「普通だろ」  私は思わず笑ってしまった。 「二次会、俺は早めに切り上げるけど、お前は?」 「心配しないで?」 「帰りはタクシー使えよ」 「はいはい」  蓮兄に心配されるのは、くすぐったくて、嬉しい。愛されていると実感できるから。唯一、信じられる愛情。  Barに着いて三十分ほどで、蓮兄が二次会代を置いて帰ると、それぞれ気の合う人たちで席を分けて飲み始めた。私は西岡さんと三浦さんと若葉さんと四人で飲んでいたけれど、彼女たちのペースについていけなくなってカウンターに移った。 「ブラックルシアンを」  バーテンダーはブラックルシアンとチョコレートを二粒、私の前に置いた。 「お口直しに」 「ありがとう」  誰も私が移動したことに気がついていないようだった。服飾部の女性三人、西岡さんたち三人、秋山さんとメディア部の笠原さん、男性三人。  あれ……圭がいない?  そう思ったと同時に、隣の椅子が動いた。 「彼女と同じものを」    圭だった。 「合コンの相談してたんじゃないのかよ?」  お酒のお陰で気まずさは感じなかった。 「もう終わった」 「ふぅん……。で、何飲んでんだ?」と言うと、圭が私のグラスに手を伸ばした。  断りもなく、口をつける。 「きっつ――」  私は圭からグラスを取り返し、彼が口付けた部分を指で拭いた。 「そ?」と、わざと馬鹿にしたように笑って見せた。  圭は少しムッとした表情をして、バーテンダーに差し出されたチョコレートの皿を私の前に滑らせた。  圭は昔から甘いものが苦手だ。だから、バレンタインにたくさんチョコを貰っても、全部私に食べさせた。だから、私は圭にチョコをあげたことがない。 「ふふふっ……」  私は思い出し笑いをしてしまった。 「何だよ?」と、圭が不気味そうに私を見た。  きついと言いながらもブラックルシアンを飲んでいる。 「バレンタインのチョコを思い出しちゃって……」 「ああ……」 「いくら甘党の私でも、今はあんなには食べられないな」と言って、私はチョコレートを一粒口に入れた。
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