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「おはようございます」
オフィスのドアが開いて、中から挨拶を交わす声が聞こえた。
私と圭はパッと手を離し、お互いに何もなかったようにオフィスに入った。
「朝礼の前に、今日から働いてもらう二人を紹介するわ」と、副社長が言った。
「経理部の芹沢圭くん。総務部の古賀伊織さん」
私と圭は十数人の前でお辞儀をした。
「よろしくお願いします」
「芹沢くん、彼女は三浦奈津さん」と言いながら、副社長はショートヘアの小柄な女性に手を向けた。
「彼女に仕事を教わってね」
「はい」と言って、圭は三浦さんの隣に移動した。
「総務部は野々村遼くんと西岡未希さん」
副社長に名前を呼ばれて、二人が小さく手を挙げた。
「よろしくお願いします」と言って、私は二人のそばに移動した。
「では、朝礼を始めましょう――」
各部が連絡事項を伝え、朝礼は十分ほどで終わった。
私は野々村さんと西岡さんにデスクに案内された。
「改めて、野々村遼です。一応部長です」と言って、野々村さんは軽く顎を出すように頷いた。
野々村さんは身長百六十センチの私が見上げるほど長身で、恐らく百八十センチ以上。髪は刈り上げていて、半袖のワイシャツから覗く腕は太く筋肉質で、鍛えているのがわかった。
「西岡未希です。一応主任です」と、西岡さんは高めの元気な声で言った。
西岡さんは私と同じくらいの背格好で、肩まであるストレートの黒髪をクリップでハーフアップにしていた。
「古賀伊織です。よろしくお願いします」
私はもう一度挨拶をして、頭を下げた。
「古賀さんには今週いっぱいで退職する秋山さんの業務を引き継いで欲しいの。彼女は今日は午後から出社するから、それまではオフィス内を案内するね」
「わかりました」
「それから、三人しかいないから役職は関係なく協力していきましょう。間違っても私のことを『主任』なんて呼ばないでね?」
西岡さんの言葉に、野々村さんがうんうんと頷く。
「力仕事や高所の作業は野々村さんがやってくれるから、遠慮なく言ってね」
「はい」
「あと、見ての通りウチは服装も割と自由だから、スーツじゃなくていいから。と言うか、ウチの部に関して言えばスーツは動きにくいからやめた方がいいわ」
野々村さんは半袖のワイシャツにスラックスでノーネクタイ、西岡さんは半袖のサマーニットにアンクル丈のパンツを穿いていた。
「わかりました」
「じゃあ、オフィスを案内するわね」
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