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俺はシャワーを浴びて、髭を剃り、髪を整えた。まだ少し身体がだるかったが、大したことはなかった。
伊織が帰ってから二時間。
俺はスマホを睨みつけていた。
くそっ……待つのは性に合わねぇ――。
俺は着信履歴の一番上の番号に発信した。呼び出し音が五回鳴って、伊織の声が聞こえた。
『はい』
「遅くね?」
俺は挨拶なしで言った。電話の向こうで伊織のため息が聞こえた。
『寝てなよ』
「腹減った」
『冷蔵庫に缶詰入ってる』
俺は冷蔵庫を開けた。桃の缶詰とみかんの缶詰とパイナップルの缶詰が並んでいる。
「いつ来んだよ」と言いながら、俺は桃の缶詰を手に取った。
『昼までには行くから』
「おせぇーよ」
缶詰の蓋を取る。
『元気そうじゃない。私、行く必要ある?』
やべっ――!
「いお――」
『大人しく寝てなさい!』
一方的に電話が切れた。
はぁぁぁーーー。
俺は息を吐きつくして、立ち上がった。
部屋を出ようとスニーカーを履いて、また脱いだ。
寝室に戻り、本棚から何冊かの本を抜き、ベッドの下の箱に入れた。
部屋を見回し、駅へと向かった。
焦らずに、ゆっくりと伊織を手に入れるつもりだった。けれど、いざチャンスがくると浮足立つ。四年間、封印してきた感情が溢れだす。
今度こそ、伊織を手に入れる――。
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