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「じゃあ、どうするんですか?」
「業務提携を控えているT&Nとしては、この手のスキャンダルは避けたい」と、蒼さん。
「本人はけじめのつもりかもしれないが、いい迷惑だな」
「けじめ……」
違和感。伊織も同じことを考えているようだった。
「けじめ……だけですかね」
「え?」
「すいません。完全に憶測なんですけど、もう一つ意味があるような気がするんです」
木島は愚かだが馬鹿じゃあない。
自己満足でけじめをつける為だけに、こちらの迷惑を顧みないなんてこと、あるだろうか。
「復讐の仕上げって可能性は?」と、咲さんが聞いた。
「自爆テロの可能性は考えられないの?」
なるほど。
そういう考えも――。
「それはないと思います」
伊織がきっぱりと否定した。
「根拠は?」
「笠原さんが、させないはずです」
トゥルルルル……
社長室の電話が鳴り、綾香さんが受話器を取る。
「SIINA社長室です」
直通電話のよう。
「え……? ええ。今、行きます」
受話器を置き、綾香さんが言った。
「笠原さんが来ているわ。木島の自首について話したいって言うから、迎えに行ってきます」
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