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私の作戦を話した時、圭は何も言わなかった。
私の意図を知っていながら、協力してくれたの……?
「過去に……出来たか?」
「え?」
「木島悟之って男を、過去に出来たか?」
「その為に、協力してくれたの?」
「お前の為じゃない。俺の為だよ」
FAXを終えた圭が原稿を取り出し、送信履歴をプリントアウトして、私の隣に座った。
「結婚を急いだのも、お前に逃げられないようにだし」
「そんな心配してたの?」
「木島が逮捕された後で、子供を抱えた笠原さんを気にせずに結婚する気になれたか?」
考えもしなかった。
違う。
私が考えなくていいように、圭が私を導いてくれた。
それが圭自身の為であっても、やっぱり私を想ってのことだと思う。
私は身を乗り出して、圭の頬にキスをした。
「好きよ、圭」
「俺の方が、好きだけどな」
椅子ごと引き寄せられて、私は圭の腕の中に納まった。
触れ合う唇が、熱を帯びた。
「ところで、切り札は誰だったんだ?」
キスの合間に、圭が聞いた。
私は圭の首に腕を回し、自分から舌を出した。
憂鬱な問題よりも、今はキスを楽しみたかった。
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