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「芹沢さん!」
自動販売機の横を通り過ぎた時、呼び止められた。三歩下がって覗き込む。服飾デザイン部の女性が三人で休憩中だった。
「今、お忙しいですか?」
「いえ?」と言って、俺はポケットから小銭を出す。
「明日の夜、飲みに行きませんか? 私たち三人と柴田さんと」
俺を誘った彼女は織田遥、二十五歳。一緒にいるのは、結城杏菜、二十五歳。松江千尋、二十五歳。
「柴田さんてメディアデザイン部の?」
「ええ。たまに行くんですよ」
柴田陸は確か二十八歳。
この四人の組み合わせに違和感を覚えた。
「いいですね」
「良かった! お店の場所を送りたいので番号を教えてもらっていいですか?」
俺は織田さんと電話番号を交換し、その場でメッセージを受け取った。
『明日、楽しみにしています 』
語尾にハートマーク。
この手の誘いには慣れている。
女は気のない男へのメッセにハートマークは入れないし、後ろで呆れ顔をしている結城さんと松江さんを見れば、織田さんが少なからず俺に対して興味を持っていることは想像できる。
勘違いをさせないよう、俺は返信はしなかった。
「じゃあ、明日」
俺は缶コーヒーを買って、オフィスに戻った。
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