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「応用情報技術者なら出来るんじゃねーの?」と、圭は冷ややかな低い声で言った。
「ネットワークスペシャリストの方かな?」
私のことを調べたのね……。
SHIINAに提出した履歴書には書かなかった私の保有資格。私が、圭が財務のスペシャリストだと調べたように、彼も私がコンピューターのプロだと調べたのだ。
「出来るかどうかじゃないわ」と、私も低い声で言った。
「やりたくない……と」
「理由がないもの」
「じゃあ、SHIINAの内情を嗅ぎ回る理由は?」
「圭、いい加減に――」
「二年前の報告書」
圭の言葉に、ハッとした。
「社長には報告したのか?」
気づいてたのね。
「圭は? 三浦さんに報告したの?」
「まだ、だ」
報告する気なんてないくせに……。
不思議と、気分が高揚する。
昔は圭に翻弄されていたからか、対等な駆け引きが楽しい。いつも余裕の圭が、私の言葉に表情を変えるのが嬉しい。
圭が、私と蓮兄の関係を疑っていることは気づいているけれど、あえて何も言わずにいた。これまで、私は圭が私以外の女と腕を組んで歩いている姿を何度も、何度も見てきた。
圭も少しは苦しめばいい。
ささやかな仕返し。
圭が私と蓮兄の関係を知るまで、そう時間はかからないだろうから。
その時は、あまりに早く訪れた。
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