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ディスプレイに表示されているのは集計用のExcelの表で、この表を基に必要な項目の集計がシート分けされている。私はマウスを動かして、Excelの表の更新日時を確認した。
二日違う……。
ファイルに閉じられているのはExcelの基データから必要な項目を抽出して作られた報告書。だから、基データの更新日時が報告書の作成日時の後なのは不自然だ。
改ざん……?
いや、更新したのが報告書関連のデータとは限らない……?
「二人ともお昼にはここを出てね」
三浦さんの声に、私はハッとして顔を上げた。圭への説明を終えたようで、彼女は部屋を出て行くところだった。
圭は私の隣の席でファイルを開いている。
「わかりました」と言って、私はディスプレイに視線を戻した。
シートを順に開いていき、数字を確認する。同時に、ファイルの資料の他のページにも目を通す。
「――り」
古いデータから見たけど、不自然な箇所はなかったはず……。
「……伊織」
いや、でも、基データの更新日時と報告書の作成日時の確認まではしなかったし……。
「おい!」
「ちょっと黙ってて!」
考えを邪魔されて、私は咄嗟に大きな声を出してしまった。隣で圭が面食らった顔をしている。
「あ……、ごめん。何?」
「そんな怖い顔して、どんだけ集中してんだよ」と言いながら、圭がディスプレイを覗き込む。
「二年前の資材管理表?」
「項目が複雑でわけわかんなくなっちゃって……」
私は報告書のファイルを閉じた。
あ、ディスク!
人事のディスクを戻していないことを思い出し、私は丁寧にファイルを持ち上げた。圭の席から、ディスクの保管場所は死角になっている。
「なぁ」
「なに?」
「お前、ここに来る前は何してたんだ?」
圭がマウスをクリックする音が聞こえる。
「派遣」
「はあっ? お前が派遣?」
私は静かにディスクを元の場所に戻した。
「そんなに驚く?」
「お前、頭良かったじゃん」
人付き合いが苦手な私は、クラスメイトが遊んでいる間もひたすら勉強していた。お陰で、成績は常にトップだった。
「面接、苦手で」
「ああ、納得」
私は報告書のファイルを棚に戻し、二年前の別ファイルを取り出した。
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