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「腹減った」
「私はお弁当が――」
PCをシャットアウトしようとマウスを動かした時、ほんの一瞬だけフリーズした。資料室のPCはデータ管理用だから、SHIINAの創立当時から同じものを使っている。不自由はないとはいえ古いことは確かだから、たまに動きが鈍くなってもおかしくないのかもしれない。
けれど、私がそれに気がついたのは初めてだった。
反射的に壁の時計を見た。
十二時五分十秒。
バックアップシステムが起動した……?
私はもう一度マウスを動かした。その瞬間、ディスプレイが真っ暗になった。PC自体はカリカリと微かな音を立てている。
まさか――。
「どうした? 伊織」
圭がディスプレイを覗き込む。真っ暗だ。今度は私を見る。
「伊織?」
私も圭をじっと見た。けれど、眼球が圭の姿を映しているだけで、私の脳に彼の姿はない。
嫌な予感しかなかった。
そして、私の嫌の予感はよく当たる。
クラッキング――!
迷っている時間はなかった。
「圭、答えて。あなたはSHIINAの敵?」
「は?」
「私はSHIINAを守りたいの。だから、圭がSHIINAの人間でないのなら、私は容赦なく潰すわ」
緊張で、心臓が速く大きく飛び跳ねる。それを圭に悟られないように、私は静かにゆっくりと呼吸を整える。
「ホッとしたよ。おまえと同じ側で」
圭のその言葉の真偽を確かめる時間はなかった。
「協力する気があるなら、時間を計って」と言いながら、私はスカートのポケットからUSBメモリを二つ出した。
「ちょうど三分。一秒も遅れずに。十秒前からカウントして」
「は?」
「説明は後よ。三、二、一!」
私はUSBメモリをPCに差し込んだ。圭は焦って腕時計を見た。
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