Mission 5 探り合い

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 私はもう一つのUSBメモリを、隣のPCに差し込み、椅子に座った。先にUSBメモリを差し込んだPCのディスプレイに砂時計のマークが表示された。  私は三回手をグーパーさせて、全力でキーボードを叩き始めた。  三分間とは、私のプラグラムが息を潜めて活動できる時間。三分を過ぎると、恐らく敵に気付かれる。  隣のPCでは、敵が塗り替えていくデータの記録(ログ)を保存している。それを解析すれば、敵の標的(ターゲット)が何かがわかる。  私は敵のプログラムにウイルスを仕込み、敵の正体を探っていく。けれど、思うように進まない。  このPCの性能(スペック)じゃキツイな……。 「いい子だから、頑張って――」  私はいつものようにPCに語りかけた。 「一分前」と、圭が言った。 「お願い……もう少し――」  ディスプレイの英数字が下から上へスクロールを始め、数秒で消えた。同時にデータ処理完了までのパーセンテージが表記される。 「早く……早く――!」  私のマシンならとうに終わっている作業。三分間がこんなに短く感じたことはなかった。 「十、九……」と、圭がカウントダウンを始めた。 「もう少し……」  九十五、九十七……。 「三、二、一――」  百――!!  私は圭が『一』と言うと同時にUSBメモリを引き抜いた。  隣のPCはまだ微かな電子音を鳴らしていた。  私はホッとして、椅子の背もたれに身体を預けた。眼鏡を外し、目を閉じて、乾いた眼球に潤いを求める。 「間に合った――」
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