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私はもう一つのUSBメモリを、隣のPCに差し込み、椅子に座った。先にUSBメモリを差し込んだPCのディスプレイに砂時計のマークが表示された。
私は三回手をグーパーさせて、全力でキーボードを叩き始めた。
三分間とは、私のプラグラムが息を潜めて活動できる時間。三分を過ぎると、恐らく敵に気付かれる。
隣のPCでは、敵が塗り替えていくデータの記録を保存している。それを解析すれば、敵の標的が何かがわかる。
私は敵のプログラムにウイルスを仕込み、敵の正体を探っていく。けれど、思うように進まない。
このPCの性能じゃキツイな……。
「いい子だから、頑張って――」
私はいつものようにPCに語りかけた。
「一分前」と、圭が言った。
「お願い……もう少し――」
ディスプレイの英数字が下から上へスクロールを始め、数秒で消えた。同時にデータ処理完了までのパーセンテージが表記される。
「早く……早く――!」
私のマシンならとうに終わっている作業。三分間がこんなに短く感じたことはなかった。
「十、九……」と、圭がカウントダウンを始めた。
「もう少し……」
九十五、九十七……。
「三、二、一――」
百――!!
私は圭が『一』と言うと同時にUSBメモリを引き抜いた。
隣のPCはまだ微かな電子音を鳴らしていた。
私はホッとして、椅子の背もたれに身体を預けた。眼鏡を外し、目を閉じて、乾いた眼球に潤いを求める。
「間に合った――」
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