Mission 5 探り合い

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「さすがに、説明してもらえるんだろうな」  数秒、私の頭から圭の存在が消えていた。目を開けると、鼻が触れそうなほど近くに圭の顔があった。 「これは?」  私がたじろいた隙に、圭は私の手からUSBメモリを抜き取っていた。それを、顔の横で振って見せる。 「今のは? お前は何をした?」  だんまり……ってわけにはいかないか――。  私は大きく息を吸って、姿勢を整えた。 「話す前に確認させて。圭がSHIINAの敵ではないのは確か?」 「……信じられないか?」 「信じたいわ。けど、立ち位置によってその人の正義は変化するから」 「確かにな」と言って、圭はUSBメモリを差し出した。  それを受け取ろうと伸ばした私の手を、圭が握りしめる。 「俺はSHIINA内の不正を暴くように指示されている」  圭が私同様、誰かの指示で動いているだろうとは思っていた。私と違って、圭自身にSHIINAへの思い入れはない。 「だが、これには条件がある」 「条件?」  私の手を握る圭の手に、力がこもる。 「惚れた女が邪魔になる場合、手を引く」 「は……?」  惚れた……女――? 「この仕事がその女より大切だなんて思えないからな」と言って、圭はニッと笑う。 「誰とは言わねーよ?」  自然と、顔が綻ぶ。嬉しかった。  場所が違えば、私から押し倒したいくらい。 「奇遇ね……。私も上司に似たようなことを言ったわ」 「え……?」 「相手が誰とは言わないけど?」  圭がゆっくりと目を細め、笑った。嬉しそうに。  圭が私の手をグイッと引き寄せた。私は椅子から立ち上がり、彼の胸に身体を預ける。私たちは互いの腰に腕を回し、しっかりと抱き合った。 「伊織……」  圭の息を耳に感じて顔を少し上げると、唇が重なった。触れるだけの優しいキスは、なぜかとても神聖なものに思えた。  本当はもっとキスを楽しんでいたかったけれど、PCの音が止んだことに気がついた私は、パッと圭の腕からすり抜けた。  USBメモリを挿したままのPCが再起動を始めていた。
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