Mission 5 探り合い

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「ここの入荷数と……この在庫数……そして、この交際費」  私は昨日までに調べた内容を、圭に詳しく説明した。  仕入れ値と入荷数、交際費は増やされていて、在庫数は減らされていたこと。報告書は、ファイルに閉じられた後は滅多に誰も手に取らないこと。  そこまで話して、時間切れとなった。  十三時になり、圭はデスクに戻らなければならなくなった。 「今夜、泊まる準備して来いよ!」  資料室を出る時、圭が言った。私は間髪入れずに返事をした。 「あ、無理」 「はぁ?」 「だって、これの解析しなきゃ」と言って、USBメモリを見せる。  圭はドアノブに手を掛けたまま、苦い顔をして言った。 「じゃあ、俺が行く」 「ダメ!」 「おま――っ。こんな大事な話、週明けまで持ち越せるかよ!」 「でも! 私の部屋はダメ」 「社長が来るから――?」  圭の言葉がすぐには理解できなかった。 「え……?」 「いや、何でもない」と言って、圭は無表情で目を逸らした。  私の心臓が大きく、大きく揺れた。  なんか……これは――。 「デスクに戻るわ」  これは、ダメ――!  このまま圭を行かせてはダメだと、わかる。私は咄嗟に彼の背中に飛びついた。 「待って!」 「なに」  背中越しに、圭の低い声が頭に響く。 「なんで社長が出て来るの?」 「…………」  圭は基本的に何でもはっきりと言葉にする。その圭が口ごもるのは、珍しい。 「圭!」 「――親しいんだろっ? ホテルの部屋で過ごすくらい」  圭の鼓動が大きく早くなる。  ホテル……? 「なん……で――」 「お前が二股なんて器用なことが出来るとは思ってねぇよ。けど、気になんだろ。他人と深く関わるのを嫌うお前が、親しくしてる相手とか……」  私はゆっくりと圭から身体を離した。 「妬いて……るの……?」 「別に」  圭は振り返らずに出て行った。  私は顔がだらしなくにやけてしまうのを止められなかった。
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