Mission 5 探り合い

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 終業時間間際。  私は圭にメッセージを送った。 『今夜はカレーです。  二十時、○○駅で待ってる』  圭からの返信はなかった。  既読にはなっているから、来るはず。  私は急いで家に帰って米を研ぎ、カレーとサラダを作り、部屋を片付けた。この部屋に蓮兄と咲さん以外の人を入れたことはない。  思えば、実家の私の部屋に圭を入れたこともなかった。 『惚れた女』  午後の仕事中も圭の言葉が、何度となく私の動きを止めた。  ずっと避けてきた言葉が嬉しくてたまらない。 「ふふふ……」  自分の不気味な笑い声に、恥ずかしくなる。  待ち合わせの十五分前に部屋を出ようとした時、インターホンが鳴った。モニターを見て、目を疑った。  なんで圭と……蓮兄が……。  モニター越しにも、圭が相当不機嫌なことはわかった。 「どう……ぞ」と言いながら、私はオートロックを解除した。  蓮兄――!  私はため息をつきながら、カレー用の皿を三枚、鍋の横に置いた。  いつもは部屋のインターホンも鳴らす蓮兄が、今日に限って鳴らさずにドアを開けた。 「お、カレー」  我が物顔で部屋に上がる蓮兄の後ろで、圭が私を睨んでいる。 「芹沢、上がれよ」と言いながら、蓮兄が持っているビニール袋を私に手渡す。  中には缶ビール。 「お邪魔します……」  蓮兄には昼間、圭に私と蓮兄が兄妹であることを話すと、言っておいた。蓮兄は少し面白くなさそうだった。  とはいえ、まさかこんな子供染みたことをするなんて――! 「どうして二人が一緒にいるの?」 「駅で会ったんだよ」と言って、蓮兄は脱いだジャケットを私に渡す。 「伊織と待ち合わせてるって言うから、一緒に来た」  これじゃ、どこから見ても恋人。蓮兄はあからさまに圭を挑発している。  蓮兄のことは好きだけれど、さすがにムッとした。 「違う。私が呼んだのは圭だけなんだけど?」 「なんで? いつもはいきなり来ても何も言わないのに」  蓮兄もこの部屋の不穏な空気に気付いていて、楽しんでいるようだった。
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