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Mission 1 最悪の再会
最も会いたくなかった人に、最も会いたくなかった日に、最も会いたくなかった場所で再会してしまったら、どうしますか?
笑顔で挨拶する。
無視する。
忘れたふりをする。
ほんの数秒で色んなパターンを予測して、私が取った行動は――。
「社長の椎名蓮です。こちらは副社長の市川綾香。二人とも今日からよろしくお願いします」
社長が爽やかな笑顔で頭を下げた。隣の副社長も。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
私も深々と頭を下げた。
「お願いします」
私の隣で、奴も頭を下げた。
「同じ年齢で同じ日に中途入社なんて、偶然だね」と言って、社長はデスクに座った。
「芹沢圭くんは経理部、古賀伊織さんは総務部に配属となります。我が社は社員も多くはないし、役職はあるけれどみんな同じような年齢だから、気負わずに仲良くやっていきましょう」
「はい」
私と圭の声がハモった。
「さっき二人の履歴書を見て気がついたんだけど、あなたたち小・中・高と同じ学校だったのね」と、副社長が言った。
履歴書――!
私は何とか平静を保ったのに、社長が不自然な驚き方をした。
「え……?」
蓮兄、慌てすぎっ!
「何となく見覚えがあるなとは思ったんですが、履歴書にもあるように、私は転校が多かったのであまり覚えていなくて……」
私は半分事実、半分嘘を言った。そして、意を決して圭を見た。
「でも、すごい偶然ですね」
余計なことは言わないでよ!!
「そうですね……」と言って、圭がニヤリと笑った。
「ホント、すごい偶然」
相変わらず、ムカつく奴!
「朝礼の時間だから、行きましょう」
私と圭は、社長と副社長の後に続いて、社長室を出た。
「伊織、いつから眼鏡?」
圭が歩きながら、私の耳元で言った。
「離れてください、芹沢さん」
私は圭と距離を取ろうと、歩く速度を上げた。上げようとした。
圭に手を掴まれ、私は彼の隣に連れ戻されてしまった。
「ちょ――」
圭の指と私の指が交差する。
記憶より大きくて力強い圭の手の熱が、電流のように私の身体を廻る。
一瞬で、心の片隅に鍵を掛けて閉じ込めていた圭との記憶が蘇ってしまった。
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