僕の話

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 今日はアルバイトに行った。  喫茶店のウェイターのバイトだ。  僕は一人暮らしだし、仕送りもあまり期待できないから、基本的に毎日バイトを入れるようにしている。  そのお陰で不思議なことに逢う機会に恵まれているのだと思う。  今日は僕のバイト先のすぐ近くにある公園で、不思議なもの、というより不思議な人に会った。  ちょうど、僕はバイトの休憩中に本屋に行った帰り。  髪の長い女の人で、真っ黒な髪を一つにまとめ、黄色っぽいシュシュをつけていた。  「若くてきれいなお母さん」って感じの女の人で、優しいお母さんそのものの笑顔で公園のブランコを揺らしている。  ブランコはゆったり、ゆったり揺れる。  お母さんはにこにこ笑いながら、時々愛おしげに、ブランコを見る。  ブランコが揺れる。  無人のブランコがゆったり、ゆったり揺れる。  その若いお母さんは、誰も乗っていないブランコの鎖を握り、ゆったり、ゆったり、揺らしていた。  僕に見えないだけで、子供がいるのかとも思ったけれど、生憎、僕以外にその場にいなかったし、すれ違ったサラリーマン風の男の人に声をかけるのもなんだか躊躇われたから、確認はしなかった。  でも、そう言う人もいるのだろうと思って僕はバイトに戻りました。
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