隙間の話

1/1
前へ
/10ページ
次へ

隙間の話

 今日は一日家にいたので、特に不思議なこととかはありませんでした。  なので、「その日あったことを書く」のルールを最初っから壊そうと思います。  カイダンクに、『隙間』という話を投稿させていただきました。  あれには元ネタがあります。  僕が小学生だった時の話。  その頃僕はまだ大阪に住んでいて、大阪も中心から離れるとだいぶ下町っぽい感じが残ってます。  僕はそう言う下町っぽいところに生まれて、小5で祖母のお寺に引っ越しました。  まあ、そんな生い立ちはどうでもいいんですが。  とにかく小学生のころ。  僕の住んでいた町は小さな工場が多くて、毎日どこかで機械の動く音がしていた。  工場の人はいろんな人がいて、でも、子供にやさしかったから、僕はよく、工場の敷地で勝手に遊んでた。  夏の暑い日その日も工場で遊んでて、工場のプレハブ倉庫とコンクリ壁の間に、毛の生えた真っ黒な、尻尾がするりと入って行くのを見た。  大方猫だろうと思って、僕はその細い隙間を覗き込んだ。  小学生の僕の手が、漸く入るくらいの隙間は真っ暗だった。  じっと見ていたら、だんだん、誰かに見られている気がしてきて、僕は振り向いた。  誰もいない。  僕は隙間に目を戻した。  いた。  視線の正体は隙間の中にいた。  まんまるい、人間の目が、僕を見ていた。  目を逸らせずに、じっとその目を見ていた。  まんまる目には瞼もなさそうに思えた。  じっと、見ている。  見ている。  見ている。  どうやってその目を逸らしたのか忘れたけれど、気が付いたら僕は家に帰っていました。  家に帰った僕を見るなり、弟は顔面蒼白にして嘔吐しました。  あれは何だったのか。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加