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横山優理子は顔を赤らめて、僕の方から視線をそらせながら、携帯ストラップを両手の平の上に乗せて、僕の目の前に差しだして見せた。
さすがに鈍感な僕でも、不器用な僕でも、彼女の言葉の意味は分かった。
あの日、駅で僕が一方的にしてしまった告白に対する、彼女なりの表現なのだろう。
「……それって?」
僕は思わず聞き返してしまった。今から考えれば、それはとても野暮なことだった。
「仕方ないから、付き合ってあげる」
そう、横山優理子はうそぶいた。でも、すぐに首を振ると、
「……ウソ。『仕方ない』なんかじゃなくて、その、……これから、よろしくお願いします」
そういって、横山優理子は小さく頭を下げた。
僕もつられて「よろしくお願いします」と小さく頭を下げた。
僕は胸の奥から暖かな温度が全身に広がっていくのを感じていた。願わくば、横山優理子の中でも、同じような何かが広がっていることを願いながら。
僕と横山優理子が付き合いだしたということは、修学旅行から帰るや否や、学校のクラスでも皆が知ることとなった。すぐにクラスの中どころか、他のクラスや、他の学年の生徒にまで噂されるようになった。
なにせ、お揃いの携帯ストラップを付けているのだ。こんなに分かりやすいことは無い。
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