第二章「い」

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 彼女も隣で女性ファッション誌を手にとって、立ち読みを始めた。それは高校生向けというよりは、ちょっと大人びた女性ファッション誌だった。登場するモデルや、掲載されている服装の雰囲気は、僕も嫌いじゃない。  でも、ちょっと高校生には金額的にも手が出なさそうな世界だった。 「そういう服を買うの?」  と聞くと、横山優理子は 「まさかぁ」  と笑った。 「高すぎて無理だし、大人っぽすぎるよね。学校も制服で、私服着る機会も少ないし」  と彼女はいうと、 「でも、大学生になったらアルバイトして買ってみたいなぁ」  と夢見る女子高生の瞳で雑誌のモデルを見つめたのだ。  僕はつい、そのモデルが着ている大人びたワンピースを、もう少し大人になった横山優理子が身に纏った姿を想像してしまった。 「きっと似合うよ、その服」  と僕が言うと、彼女は 「ありがと。お世辞でも嬉しいよ」  と恥ずかしそうに笑った。  結局、僕はコンビニでホットコーヒーを買い、彼女はその女性ファッション誌を買った。 「服は買わないのに、雑誌は買うんだ?」  と聞くと、彼女は 「目の保養みたいなものだからかな?」  と、自分でも謎そうに推理していた。  店を出ると、僕たち二人は、店の前で少し立ち話をして、そのまま駅まで一緒に歩いた。  その日以来、僕たちは、それまでよりも、もう少しだけ長い会話をするようになった。
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