第三章「う」

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第三章「う」

「ううん、なんでもない」  そんなはずは無かった。彼女は泣いていた。  ある日、校舎裏で横山優理子を見つけた。  運悪く、掃除当番で裏庭掃除が当たり、竹箒とちりとりと、ゴミを入れるためのバケツを一人で持って、校舎裏の裏庭に行った。裏庭に行ったところで、校舎にもたれかかって泣いている横山優理子を見つけた。  掃除当番の中でも、最も負担が大きいと言われるのが裏庭掃除だ。  本当は二人でやる掃除当番なのだが、相方になった女子は「ゴメン、今日は塾で早く来いって呼び出されてて! 本当にゴメンね! やっといて」と言って、先に帰ってしまった。だから、一人でやらなければならない。ちょっとアンニュイな気持ちで裏庭に入ると、泣いている横山優理子を見つけたのだ。  僕の頭の中から、裏庭掃除の事なんてすぐに吹き飛んだ。
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