13/39
前へ
/97ページ
次へ
◇◇◇  事後の俳優が浴室を使っている間に、レックは同じ階にある金庫を開く。いつもの流れだった。  変態じみたセックスを撮る。男優を風呂に入れる。片付ける。金を用意する。  今月予定されている分の出演料から真中の希望額を数えて抜き取り、茶封筒に入れる。封筒には特に何も明記しない。薄いラテックス製の手袋は肌に張り付いてじっとりと内側に汗がにじんだ。  クロゼットから脱いだまま丸めて放置していたラグランスリーブを引きずり出し、裏返ったのを直して頭から被る。  裾が、ラテックス手袋を食っていた。  13時半。  時計を確認すると胃の中で空気が動く音がした。  腹の中を何かが動く音は不快で、レックは作業用のアルミデスクに向かおうとしていた足をキッチンに向ける。  システムキッチンの冷蔵庫を開き、経口補助食品を取り出してチューブを咥えた。  喉に滑り落ちていくゲルが腹に溜まっていく。
/97ページ

最初のコメントを投稿しよう!

189人が本棚に入れています
本棚に追加