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 以前はもっと煌としていた。  しかし、それを記憶しているのは自分ではない。  『早すぎませんか』  白い指先が素鼠色のシャツに文字を書く。  「君に会いたくて仕方なかったからね」  『地下室を用意しています』  女にするような甘言は無視した。  顎を捕えた指を軽く往なし、裸足のまま降りた土間から上がる。  触れられた場所に体温が残ってる。  階段に足を掛けると、土間に靴を履いたままの相川が立っていた。自分が入ってきた扉を眺めている。  レックはポケットからペンを取りだし、振りかぶって投げた。どこか湿った音が相川の足元でした。  こちらを見返った相川の前髪がひと房、撫で付けたオールバックを剥がれて、眼鏡のフレームに落ちる。  視線を受けたレックは人差し指で階上を示した。  「地下じゃないのか?」  問い掛けに肩を竦めて答えるとレックは階段に踏み上げた右足に体重をかけ、そのまま音もなく階段を昇る。  別に、『準備』を見に来たわけではないことも充分に理解している。言われずとも、レックは相川の真意を拾い上げる。
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