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30秒足らずの留守録を切って、時刻を確認する。
8時58分。
構想練り、機材準備を済ませ、昨日録った動画を編集し始めれば俳優がこちらに着くころはまだ、作業が続いている。半端な時間だ。
需要に応えるには扇情的で直接的な動画が必要。編集するには足りない時間。
今回の撮影に定点を使うか、ハンディを使うか。小型を使って『ナカ』を撮影することもある。大画面に鮮やかな肉色がぬらぬらとてらつく様は内視鏡の映像に似ているらしいが、ワイプに使えば悶える顔と内壁の様子で再生数は上がる。
性的興奮を催すかどうかが重要。
他の誰でもない、自分自身が興奮し、勃起して射精するか。あるいは精神的な絶頂を迎えられるか。
それが重要なのだと教えられた。
思い巡らせる内に頭の中がぼんやりとけぶってきて、どんな趣向を凝すかだけが意識に留まる。アナル拡張、玩具、異物……焦らした果ての連続ドライオーガズムは今回の役者には今一つ難がある。ガキの使い風情の素人が、初めからドライは不可能だ。
全裸の男が苦悶に満ちた顔で歯を食いしばる。レンズ越しにその姿を捉え、ローションににちゃつく指を肉の奥へと潜らせる。括約筋のある入り口とは裏腹、腸壁は柔く、異物に戦きながらも抵抗はない。指で探る先、勃起によってしこった前立腺がある。始めは探るように緩やかに、それから指先を立てて、押しながら引っ掻く。
男の口が苦悶ではなく悦楽にほどける。たらたらと先走る分泌物に絶頂が見え始める。
だらしなく口許から涎を垂らした顔。
赤い唇が『イく』と懇願する。
瞬間、前立腺を腹に向かって押し上げる。ぐぱと縦に開かされた肛門のせいで男は射精できずに悶える。水揚げされた魚のように口を開閉し、体を跳ねさせる。手足は力が籠りすぎて痙攣し、突き上げた腰の頂点で男性器がぶるぶると揺れる。
一頻りの身体反応の後、体は力を失う。開かされた肉環は窄まりを取り戻し、一層キツく閉じたままひくひくと蠢く。勢いのない射精が鈴口から棹を伝って繁みに垂れ滴る。
シーツに墜ちた肢体。阿呆のように惚けているのは他でもない、自分自身だった。
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