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「あっあそこにいる」  黒須が指差した駐車場の入り口の花壇の方を見ると、小さな女の子が背の高いお父さんと手をつなぎながらこちらに見ている。お父さんはこちらに背を向けて小さな手を揺らしながら携帯電話で誰かと話している。  女の子は僕が手を振ると笑顔を返してくれた。 「かわいいな」 「ほんと」  黒須も一緒に手を振った。  花壇の花よりも大きい花柄のワンピースを着た女の子だった。  初めて会って、もうさよならのはずなのに、その女の子はまるでそれを楽しんでいるかのようにとても楽しそうに笑っていた。                                                               おわり
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