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 何もかも変わったようで結局は何も変わっていない。手から伝わる温度に安心してしまうところも変わっていなかった。  街路灯と、マンションからの光と、一軒家の表札を照らす灯りが夜を彩っている。 「あれ? 雨が降ったみたいだね」 「ほんとだ」  いつの間に雨が降ったのか、道がすこし濡れていた。しかしすでに雲は晴れていて月は出ている。  僕らのことを月だけが見ている。僕はもう隠れることも逃げることも諦めたように歩いていた。  もしいずれ黒須と別れる時が来ても同じようには泣かないですむだろうか? 僕の胸はまっすぐナイフが刺さらないくらいには強くなっているだろうか?  僕の手を引きながら黒須が浮かれたような声で言った。 「俺もこうやって先生と歩いてみたかったんだ」 「…………」  優しく包む手を握り返した。  終わりに近づいているとしても今は少なくとも黒須の家で二人で眠りにつく方向へ向かっている。それはとても楽しいことのように感じた。  誰に罪悪感を感じることもなく愛し合うことができるのだから。  黒須のマンションの部屋に着くと玄関で黒須に背中に手を回され、キスをされた。  酒の匂いを感じたが僕は目をつぶり、飲めない酒を飲むように息を吸い込むと舌を吸われた。     
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