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「せんせぇ~」
頭のてっぺんで丸めた髪をゆらゆらと揺らす生徒に腕にしがみつかれていた。
「黒須先生に彼女ができたってほんと~?」
「し、知らないよ」
僕は生徒を引きずりながら職員室へ向かう。
「うそ~、友達だから知ってるでしょ~? ね~その子私よりかわいい~?」
自分よりかわいければ納得するのだろうか?
「……た、たぶん」
「えーーっ! うそでしょっ!? ありえないっ!」
「いてっ!」
怒り出した生徒になぜか僕が背中を叩かれた。
「日向、これだけ?」
「うん」
僕はマンションの前で待っていてくれた黒須にダンボールを手渡した。
僕が自分の家に帰ることを嫌がる黒須に説得され、僕は黒須の家に引っ越すことを余儀なくされた。前に僕を寂しがり屋と称してくれた黒須は僕以上の寂しがり屋ぶりを発揮してくれたのだ。
これから二人で家に残ったガラクタを中古屋に売りに行く予定だった。
黒須は車の中にダンボールを乗せて中を覗いている。
「絶対に売れなさそうなのは捨てちゃったから」
「そっか」
トランクをしめたあと黒須が後ろを振り返った。
「なに?」
「いや、さっき小さな女の子がこっち見てたから」
「どこ?」
僕は首を巡らせたが誰もいなかった。
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