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 正直、高也が結婚しようがしまいが僕には関係ないと思っていた。僕らの関係がそれくらいで終わるわけがない、高也が僕から離れられるわけがない、高也は僕を愛していると自信を持っているからだ。  これから何が起きても僕と高也を引き裂くことは不可能だろう。  七年前、大学生の時に知り合い、僕らは友人という殻を被ってはいたけれど最初から惹かれ合っていた。隠れて手を繋ぎ、隠れてキスをして、何度も愛し合った。  僕と付き合う前から高也には彼女がいたけれど、おおっぴらに言えないだけで高也が彼女よりも僕の方を好きなことはわかっていた。  高也の本当の気持ちは僕だけが知っていればいい、そう思っていた。  高也の本当の恋人は僕だからだ。    授業終わりに黒須に最寄りの駅を聞かれ答えるとそこが待ち合わせ場所になった。  黒須は駅のホームに降りたとたん、フェンス越しに改札の外で待っている僕を眺め見た。  休日だったが学校にいる時と何ら変わらないワイシャツに黒のスラックスを履いていた。社会人になってからはすっかりおしゃれとは無縁の生活を送っていた。  黒須は薄い胸板と細長い手足でさらりと着たシャツ。それは春と夏の間の空の下で涼しげに見えた。長めの黒髪が眩い日差しの中で揺れている。     
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