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「全く、なにが“平成”だよ。これじゃぁ“乱成”だ…」
動く竹と弾丸がぶつかって、爆ぜる音を聞きながら、俺は死んだ仲間“佐藤”の言葉を思い出していく。
新しい年号に変わる頃、我が島国では一つの“誇大妄想”が“現実”のモノとなった。
“妖怪・心霊現象”それらが人間に及ぼす実被害“霊障”が災害やテロと同様に定義、
認知されたのだ(詳しい成り行きは俺もよくわからんが…)
と同時に、それらが起こすであろう社会的混乱を防ぐため、
一般大衆への周知はしない事が決まった。
最も、海外、中東辺りの宗教家達なんかはこの現象の事をよく理解していて、
だからこそ、大国の属国である筈の我が国に対し、テロが起きないとまで言われる始末だ。まぁ、それはともかく
“平成”という穏やかな時代の幕開け…その裏側で、闇と人の争いは激しさを増していく。
人間側に負けが続くと、その“代償”は災害や過激宗教集団のテロといった
“直接的な障り”に姿を変え、社会に実害を与えた。
霊障や妖怪と戦う者達は“サキモリ”と定義され、2つの部門に分けられる。
一つは陰陽道や退魔師のような特殊能力を持った者、“防人”
漫画とかでは言えば主役、ヒーローサイドだな。
そして、もう一つは能力が無く、誰も知らない、やりたがらない汚れ仕事に投入される
先行部隊“使い捨て”ポジションの“先守”つまり、俺達だ…
「駄目だ。小隊長、数が多すぎる。村に戻りましょう。」
足元には粉々になった竹が散らばっていく。だが、血に飢え、突き出される竹槍の数は
一向に減らない。そりゃそうか…
なんせ林が、竹藪全体が俺達に襲いかかってきているんだからな。
空になった20発入りの縦型弾倉を手早く交換し、俺達の後方で震える隊長殿に声をかけた。
「小隊長…」
振り返った自身の顔が、戦慄で歪む。纏った迷彩服からいくつもの竹槍が覗き、
血を吹き上げる“槍ぶすまのオブジェ”…
かつて小隊長だったモノが立ったまま絶命していた。
一瞬、ボンヤリした俺の横で、動く竹が爆ぜる。アカが煙を噴き上げる銃口を上げ、叫ぶ。
「逃げるんだ。」
頷き、後方に迫った竹共に目がけ、手持ち最後の手榴弾を放った。
後方で上がる爆風を、肌で感じながら、俺は本日何度目かの悪態をつき、
アカの背中を追った…
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