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“山で猟師が消えた…”
全ては、その通報から始まった。駐在警官、自警団が捜索に向かい、みな消えた。
政府はこれを妖や霊関係の“霊障”と判断し、俺達を派遣する。
使い捨ての“先守”は文字通り“先に守る”という意味だ。本職である“防人”の連中が
動くより、俺達が先に現場に向かい、対処できそうなら、その場で解決。無理なら全滅。
いわば“適正試験”として投入されるのだ。
場所は東北地方の奥深い山間部、人口200人ほどの寒村。夏季だというのに、
やたら涼しい山の中に俺達は降下する。昼時の眩しい陽射しが木々の間から光を入れ、
進む隊員達を照らしていく。
人数は30人。アルファ、ブラヴォーの2小隊に分かれ、移動する事数十分、やがて…
逞しく、旺盛に茂った竹藪に、俺達は遭遇した。
こういった事態に幾度も遭遇し、生き残った奴等はある程度“現場慣れ”をしてくる。
その直感が、この奥に何かがあるだろうと告げていた。
戦闘隊形をとり、俺達ブラヴォ―が後衛、アルファが先に、薮へ突入する。その結果、
古い作りの家が立ち並ぶ“隠れ里”を難なく発見した。
どうみても“普通の人”が住むような集落ではない。双眼鏡で確認した住人は、
大河ドラマに出てくる、古びた着物に少し人間離れした容姿
(耳が長いモノ。目が赤いモノ、多種様々だ)
加えて言えば、消えた警官や自警団の半纏と一緒に
乾燥した赤黒い肉の塊が干されている。事は明白だ。
この後の動きは、いつも決まっている。“先に守る”を実行するのだ。
村の入口付近に迫ったアルファ小隊の女隊長、今義理(いまぎり)が合図を出す。
黒いベレー棒を被り、顔面を緑地迷彩で色濃く染めた部下達が手にした自動小銃の
先に付けたライフルグレネード(小銃榴弾)を一斉に発射する。
ロケット花火のような噴射音が響き、放たれた榴弾が家々に着弾し、大爆発と巨大な炎を
上げていく。藁や木で組まれた家屋はすぐに燃え上がり、中にいた“異形の住人達”を
外に押し出す。
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