BAMBOO WARS~サキモリ怪異交戦記録~

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 「むごすぎる…」 アカが呻く。先に言われた形の俺は、ただ黙るしかない。山を抜け、動く竹共を 何とか振り切った。逃げる先に待っていた”人の村”は、安全だと思った先は… 一面が血の海。女も男も、老人、子供、皆、竹に突き殺されている。 村の入口、恐らく最初の犠牲者、竹に頭を刺された女性の死体を見る俺の脳裏に、 この戦いの“キッカケ”がゆっくり回想されていく… “あの竹取の姫様は、恐らく村の巫女だったに違いない”… アルファが去り、村に突入した俺達は、燃え盛る家屋を消火し、死骸を一か所に集め始めた。 ここでの出来事を隠蔽するためである。一般人には知られないように燃やし、 軽い山火事にする。殺された警官達は穴に落ちたか、熊に殺された。 そう言う話になるのだろう。 死骸の中には子供や女性もいた。若干の違いはあると言えども、どう見たって人間。 恐らく、かつて大和政権が生まれた時、山の奥に引っ込んだ豪族達の子孫… コイツ等が霊障や怪異を起こす存在?妖怪だっていうのか?とても信じられない。 だが、現に人が殺され、干し肉になっている。上の連中からすれば、立派な“排除理由”だ。 周りの同僚達の顔を見る。皆が悲壮な表情、俺もきっと同じ顔なんだと思う。 だが、殺さなければ、こっちがやられる。壊滅した神戸にガスが充満した地下鉄。 あれは全部、コイツ等のせいだ。殺られる前に先手を撃つ。それが先守の仕事なのだ。 そう自分を納得させる俺の視界に、ふわりとした着物の裾がなびく。 顔を上げれば、死体の山から起き上がった煤だらけの… それでも、なお艶やかな着物姿の少女。普通の綺麗なお姫様みたいな容姿… だが、尖った耳は立派な人外の証拠… 迷わず銃を向ける。佐藤に他の仲間達も気づき、こちらに走ってきた。 それを音で確認し、俺は慎重に声をかける 「落ち着け、何もしなければ、殺さない。言葉わかるか?大丈夫、大丈夫だから。」 勿論、嘘だ。この子を生かす理由はない。仮に捕虜にしたとしても、彼女に待っているのは 非道極りない研究期間の実験動物としての扱い、どっちにしても悲惨なのは同じだ。 こんな出来事を何度も経験している俺としては、今更、罪悪感や道徳的観念は微塵もない。 声をかけたのは、あくまでも油断させ、こちらが先手を仕掛けるためのモノだ。
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