0人が本棚に入れています
本棚に追加
「殺さない?ふふっ、そうか、殺さないか?」
少女が見た目に反し、大人びた口調で応じる。それに伴い、額から一筋の血が流れていく。
不味いな…
「手当てを…」
思わず伸ばした手の前で、少女が歯を剥き出しにして、叫ぶ。
「これだけ殺せば、満足か?もう殺さない?我が一族を?
竹取の時代から平穏を紡ぐ我らを!?何をした?我らが何をした?
大和の民が森を開き、我らの住処を奪った時、こっちは黙って奥に引っ込んだ。
痩せた土地を切り開き、ここまで開墾した。たまに迷い込んだお主らの仲間を
我らは返してやった。
それなのに、こないだ迷い込んだモノは我らを見るなり、火の棒を使った。
“化け物”
と叫んでな。我らはそいつを殺した。当然だ。すると大勢やってきた。我らは戦い、みな
殺した。当然だ。家族、一族を守るための権利だ。なのに最後は主らが来た。
大勢来て、我らを火の棒で殺した。皆、殺した。何故だ?
我らの何がいけない?主らと少し違うからか?それとも我らと同じようなモノ達が
主らに何かをしたのか?何故だ?答えろ?答えて見ろ?大和の兵よ。」
「悪い、全部だ。」
静かに引き金を引いた。少女の頭に穴が空く。彼女は頭後ろに花びらのような血しぶきを
綺麗に広げ、その場に転がった。
「竹取の姫様、撃っちまったか?」
「ああ、撃った。」
横に並んだ佐藤の声に無表情で頷く。コイツは何でもあだ名をつけたがるが、今回は的確だ。
竹に守られた一族のお姫様…さて、中隊長への言い訳はどうしようか?
だが、他の仲間に、化け物とはいえ“子供殺し”を味わせるより、始末をつけた方がいい。
汚れなら任せろだ。そう考える俺に、佐藤の隣に来たアカが
妙な形をとる少女の”手の構え”を指さす。
最初のコメントを投稿しよう!