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達也は立て付けの悪い扉を少し開けて覗いていた。
建物の中央にはリングが設置してあり、その横ではサンドバッグに向かい、パンチやキックを叩き込んでいる男がいた。
「なんだ、こりゃ?ジムか?」
サンドバッグを叩いていた男は達也の存在に気付き、こちらを向いた。
「…おお、スゲー」
汗まみれになった白地にプリントが入ったシャツに膝の破れたデニム。そして編み込みブーツ用の安全靴。
両腕にはタトゥーが施してある。
「(お前は誰だ?)」
その男はハングルで達也に聞いてきた。中は埃にまみれ、リングとサンドバッグ以外は何もない。
「(オレは日本人だ)」
達也もハングルで答えた。
男は手にはめていたグローブを外し、達也と対峙した。そのグローブはボクシング用のではなく、総合格闘技用の相手を掴む事が出来るオープンフィンガーグローブだった。
切れ長の一重まぶたに精悍な顔つき。鼻筋は少し左に曲がっていた。
身長は達也よりやや低いが、上半身は鍛えぬかれた筋肉に覆われ、ボディビルダーのようなゴツい筋肉というよりは、格闘家の筋肉をしている。
加えて両耳は潰れてカリフラワー状態だ、これは打撃だけではなく、柔道やレスリング、柔術等の寝技経験者特有の耳をしている。
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