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達也が恐怖で怯えていた、ソンヒョクは殺気に満ちた目付きで達也をコーナーへと追い込んだ。
(殺される!)
「ぅあ~っ!」
無意識のうちにソンヒョクにしがみつき、二人はそのまま倒れ込み、寝技の体勢になった。
するとソンヒョクは素早く達也の背後に回り、首に絡み付くようにチョークスリパーを極めた。
達也は必死で喉仏に食い込ませないようディフェンスするが、ソンヒョクは構わずに締め落とすつもりだ。
(…ぁ、視界が徐々に消えていく…)
ここで達也の意識は途切れた。
達也はソンヒョクのチョークスリーパーで締め落とされた。
ソンヒョクがあと数秒長く締めていたら、達也はあの世に逝ってただろう。
「…おい、起きろ」
頬をパンパンと叩かれ、意識を取り戻した。
「…あっ」
リングの中央で達也は大の字になって倒れていた。
「やっぱり敵わなかったか…オレ、初めて恐いと感じた…ソンヒョク、アンタそれ格闘技じゃねえだろ?」
達也はソンヒョクの恐ろしさを肌で体感した。
格闘技の技というレベルじゃない、これは明らかに殺人術だと。
ソンヒョクはスパーリング前に脱いだ安全靴を達也に見せた。
「これな、踵の部分に刃を仕込ませているんだ」
達也は安全靴を手にとって踵の部分をよく見た。
「…えっ?何だこれ!」
思わず声を上げてしまう程、巧妙に作られた靴だった。
ソンヒョクは踵落としをすると同時に踵の部分から刃が剥き出しになる。
それを脳天からモロに食らうと真っ二つに割れる…
「踵を上に向けるとこうやって刃が出る仕組みになってる」
ソンヒョクは達也にアッサリとカラクリを教えた。
「…じゃあ、アンタまさか」
達也の読みは当たっていた。
「…そう、オレはこのコリアンタウンを仕切るマフィアに雇われた殺し屋だ」
「…」
達也は言葉を失った。
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