アルバイトの依頼

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 二人は繁華街から少し離れたところにある小さな喫茶店に入った。合コンの二次会はカラオケらしいから、そこへ向かう一行と出くわさないためにするためだ。  窓際の席に座って、コーヒーを注文すると、愛香はいきなり話を始めた。 「あのね、私、高校一年の弟がいるんだけど……」 「……うん」  アルバイトという言葉につられ、喫茶店まで付き合ったはいいが、いきなり家族の話をされ、志水は少々戸惑った。 「入学したばかりの頃は元気に学校に行ってたんだけど、ゴールデンウイークがすぎたあたりくらいからかな、突然学校へ行かなくなって。いわゆる不登校ってやつになっちゃったのね。それに智流(さとる)……あ、弟の名前ね」  彼女はそう言うと、鞄からメモを取り出し、そこへボールペンで弟の名前を書いた。 「智流は大人しいけど、決して暗い子じゃなかったのに、だんだん元気もなくなってきちゃって」  大きなアーモンド・アイが心配げに曇る。 「引きこもりってやつ?」  志水が聞くと、愛香はかぶりを振った。 「そこまでは。時々図書館に行って、勉強してるし。多分、原因は学校にあると思うのよ」 「……いじめかな?」 「ええ。その可能性が大きいと思う。けど、そういうのって家族には相談しにくいって言うじゃない? だから志水くんに智流の家庭教師を兼ねた相談相手になって欲しいのよ」
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