沈む気持ち

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 電車に乗り、賑やかな歓楽街がある駅に向かい、その駅から歩いてすぐのところにあるシネコンへ足を運ぶ。  シネコンは混んでいた。  今にも泣きだしそうな天気だというのに、いや、だからこそなのか、ずらりと長い列ができている。  列に並んでいるうちに、智流の気持ちはどんどん沈んでいった。  もともと人が多くいる場所は苦手なこともあり、とてもじゃないが映画を観れるような精神状態ではなくなってきた。 「ごめん、高安。僕やっぱり、ちょっと気分悪いから、今日は帰るよ」 「えっ? 大丈夫かよ!? じゃオレも一緒に帰る――」 「高安は観ていきなよ、せっかくここまで並んだんだからさ」  チケット売り場まではあともう少しだ。 「でも……」  ひどく心配そうな顔をしている親友に、智流は無理して笑ってみせると、一人列を抜け出し、駅まで早足で歩きだす。  後ろで高安がまだ智流を呼んでいたが、聞こえないふりをして、駅までの道を急いだ。  今は家に帰って、自分の部屋のベッドに入り、体を丸めて眠りたかった。
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