最低な方法

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 ――三十分ほど前、智流がいない網埼家を訪ねた志水は、愛香に願い出た。 「本当に家庭教師がもう必要ないんだったら、君の恋人と言う立ち位置で智流くんを見守り続けたい」  志水の、どう考えても道理の通っていない告白に、 「はあ?」  案の定、愛香は頓狂な声をあげる。 「ちょっと志水くん、あなた大丈夫? いったいなに言ってんのよ? なんで私が志水くんを恋人にしなきゃいけないのよ?」 「君の恋人と言う立場なら、いつでも智流くんに会えるだろ?」 「だから、なんでよ? 智流に会いたい? 見守り続けたい? それがどうして私と恋人になることに繋がるのよ?」  愛香がお手上げといったふうにゆるゆると何度もかぶりを振った。 「……オレは、智流くんが好きなんだ。彼に恋愛感情を持ってる。だから、彼の傍にいたいんだよ」  志水は彼女からの罵詈雑言を覚悟して、自分の本当の気持ちを打ち明けた。  だが、彼女は幾分顔をしかめたものの、特に驚くことも志水を罵ることもなかった。
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