145人が本棚に入れています
本棚に追加
――三十分ほど前、智流がいない網埼家を訪ねた志水は、愛香に願い出た。
「本当に家庭教師がもう必要ないんだったら、君の恋人と言う立ち位置で智流くんを見守り続けたい」
志水の、どう考えても道理の通っていない告白に、
「はあ?」
案の定、愛香は頓狂な声をあげる。
「ちょっと志水くん、あなた大丈夫? いったいなに言ってんのよ? なんで私が志水くんを恋人にしなきゃいけないのよ?」
「君の恋人と言う立場なら、いつでも智流くんに会えるだろ?」
「だから、なんでよ? 智流に会いたい? 見守り続けたい? それがどうして私と恋人になることに繋がるのよ?」
愛香がお手上げといったふうにゆるゆると何度もかぶりを振った。
「……オレは、智流くんが好きなんだ。彼に恋愛感情を持ってる。だから、彼の傍にいたいんだよ」
志水は彼女からの罵詈雑言を覚悟して、自分の本当の気持ちを打ち明けた。
だが、彼女は幾分顔をしかめたものの、特に驚くことも志水を罵ることもなかった。
最初のコメントを投稿しよう!