決戦の時

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 どちらが勝つか。  蒼龍と紅龍の実力はほぼ同じだ。それは何百年も前から共に戦い、何度も模擬戦で戦ってきたゆえの拮抗。互いに手の内を知り尽くしている以上、龍たちが自ら新しい戦法でも取らない限り、この二頭の行動は勝敗に響かない。  それゆえに、勝敗をわけるのは騎手になる。  つまり龍たちの「どちらが勝つと思う?」という問いは、そのまま「どっちの騎手が優れている」か、というものになるわけだ。 「……どちらでしょうね」  管理人はそう言葉を濁した。城勤めが長い関係上、双方の騎手のことはよく知っている。二大騎士団の団長ともあれば噂にあがる頻度も多く、また管理人の場合は龍たち自身にふたりの話をよく聴いてもいるからだ。  それでも判断に困ったのは、それだけ実力が伯仲しているからだ。  蒼龍が得意げに何度も繰り返した自慢話を始める。 『やっぱり優勢なのはうちの子だと思うのよ。あの子の持つ大剣、見たでしょ? あれって東方の国にあった国宝で、ドラゴン殺しって名前なの。すごいわよねぇ』 「ああ……仕掛けられた侵略戦争で逆に奪い取ったという……」 『全くとんだ言いがかりもあったものよね。この国の土地は元は東の国のものだった、なんて。皇帝龍の坊やが千年も前から守護してるっていうのに』 『仕方ないわよぉ。人の子はすぐ忘れるんだから。でも、紙に記録してるのに忘れるなんて、お馬鹿さんよねぇ』 「まあ、色々とあるんですよ人間にも」  忘れたわけではなくとも、国土を広げるために侵略を仕掛けなければならず、大義名分をでっちあげる必要とか。  東の国の方を持つ意味もなかったので、それ以上は続けなかった。 『とにかく、あの大剣の攻撃力はすごいわよぉ。龍の首を斬るには力不足だけど、人の首を切るのには十分すぎるわ。分厚い鎧だって真っ二つよ』  自慢げに蒼龍は言葉を続ける。 『あの子が偉いのは、ドラゴン殺しの性能に頼らず、その技を磨き続けていることにあるの。その結果、龍の鱗に傷をつけるほどにも切れ味を増したのよ。これは歴代の騎手の子たちにも出来なかったことよ』  得意満面にいう蒼龍に対し、紅龍もまた負けていない。
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