決戦の時

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『うちの子の槍使いだって負けちゃいないわ。あなたもよく知ってる通り、あの槍は三百年前に亡くなった紫龍の骨を削り出して作ったものよ』 「そういう噂はありましたけど、本当だったんですね……」 『人の子の技術じゃ中々削れなくて、完成までに三百年もかかったあの槍、はっきり言って最高峰の武器のひとつよ。あの子はまだ槍術が未熟だからすべての性能を発揮することは出来ていないけど、使いこなした時には私たちの鱗だって貫通してみせるでしょう』 『でもまだ扱いこなせてないんでしょう? それなら現段階ではうちの子の方が有利だわ』 『潜在能力の差は大きいわよ。戦いの中で進歩することだってあるもの』  両者一歩も譲らず、自分の騎手を自慢し合う。  騎手同士と同じように、龍たちも決戦を前に舌戦を開始していた。 『うちの子は部下の子にも慕われてるのよ。この前なんて雌の子から――』 『うちの子にはすでに子にも恵まれているのよ。ちっちゃくてころころ動き回って――』  交わしているのはいかにも世話好きで噂好きな中年女性のやり取りなのだが、交わしているのは下手をすれば一国を滅ぼしかねない力を持つ龍たちだ。  それぞれ騎手に対する思い入れは相応にあるようで、中々譲らない。  そのため、とりあえずの決着をつけるためには中立の第三者が必要で、それは得てして管理人の役割だった。  幸いにして龍たちは自分の騎手が優れているという主張はしても、相手の騎手を悪し様に言うことはなかったし、管理人がどちらの騎手を選ぼうと険悪な雰囲気になることもなかった。  そういう意味では気楽に判断を下すことが出来る。  ただ、話半分に聴いて適当に答えることだけは許してくれず、そんなことをしようものなら容赦なく怒りの制裁が加えられる。  かつて二頭の逆鱗に触れ、恐ろしい眼にあわされた管理人にとって、唯一真面目に考えなければならない問いだったのだ。 『で、どちらが勝つと思う?』  ひとしきり話して満足したのか、龍たちが再び管理人に問いかける。
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