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「その息子が二十歳の時、病死した」
蛇神は淡々と言葉を続ける。
「病気でなど死ぬわけがないのに」
「え?」
「半分神の血が入っているのだ。病ぐらいでは死なない」
俺は言葉が出なかった。蛇神は俺を強く抱きしめた。その身体はひどく冷たかった。
「嫁は、当時、下働きとして同居していた、宮司の親戚の男と再婚した。その頃、我が息子の弟と妹がまだ幼く、この神社を継ぐことができなかった。結局、その親戚の男が跡を継ぐことになった。そして、今の宮司が産まれた。まったく我の血など継いでいない者が、この神社を継いだのだ」
彼の指先に力が入る。
怒りを抑え込もうとしているのだろうか。その痛みに、俺は小さく呻く。
蛇神には、それは聞こえなかったのか、そのまま彼は言葉をつづけた。
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