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「難しいな。『どこ』といえるような場所ではない。夢の中、精神世界……そういう場所だ」
「戻ってくることはできるの?」
「一年経てば戻ってくるんじゃないか?」
浮葉がすさのおさまの嫁という座についたのが去年の秋。その頃になれば、また次の、「今年の嫁」が選ばれると思う。お役御免となれば自動的に解放されるということか。
「それまで待てないよー。神様、僕のマネジメントできる?」
峯田は妖怪プロレスこと『冥闇会』の選手である。四月より今年度の取り組みがはじまり、来週からは打ち合わせがはじまることになっている。
「なるほど、やってできないことはないが。見てただけだからな」
「それ以外の、普通の仕事だってあるんだし」
「それもできないことはない。が、彼のやりたいようにはできないだろうな」
「やっぱり、浮葉のたましいを元に戻すことが最優先だね。どうしたらいいか知ってる?」
「……さあな」
浮葉と蚊鳴屋はすぐに満腹になって食べるのを止めた。浜麦とサンタはまだもくもくと食べている。
「もし浮葉さんが戻ってきたら、神様はどうなるんですか?」
蚊鳴屋が素朴に聞いた。
「……さあ。また彼の中で眠る」
「それでいいの?」
峯田が訊ねると、神様は浮葉の顔できょとんとして、別に構わない、と言った。
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