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「……はい」
逆らえない緊張感が二人の間に走る。蚊鳴屋からも普段とは違った気配が感じ取れた。戸惑うサンタに、峯田が小声で「浮葉のお兄さん」とだけ言った。峯田は、まるで戦う前のような……くろみさまの屋敷で見たような目つきになって、蚊鳴屋の後ろについた。ぞろぞろと、リビングに入る。
「たしかに、数日浮葉のLINEが既読にならず心配していたが、先ほど馴染みの小鬼から連絡がありました。これはどういうことですか?」
「大変申し訳ありません」
「何が起こったかを訊いてる」
「……浮葉さんのたましいを、見失ってしまいました」
蚊鳴屋が頭を下げた。
自分が原因なのに、どうして蚊鳴屋が謝る必要があるのだろう。サンタはぞっとして、前に出ようとした。しかし、峯田がサンタの背中のシャツをきつく握った。今は何も言うな、と言われている気がして、サンタは動けない。
「……手は尽くします」
楓は黙ってそれを聞いていたが、ふと蚊鳴屋に向かって拳を振り上げた。まずい、と思ったがサンタはまた、峯田に背中のシャツを掴まれて動けなかった。浜麦が立ち上がったが、間に合わず、気が付けば吹き飛ばされた蚊鳴屋が峯田に支えられていた。
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