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サンタは驚いて浮葉と峯田を交互に見た。目の前にいる浮葉は、たしかに彼に見える。
浮葉は、指摘されて、彼らしくなく笑った。
「誰とはさみしいな。いつも見守っているというのに」
「?」
峯田が警戒した顔で浮葉、に見えるおとこを睨む。
「左様にも、俺は浮葉ではない。もちろん肉体は彼のものだが。彼がずっと眠っているので、からっぽになった体を狙う輩から守ってやらなくてはと思って出てきたんだ。感謝をしてほしい。それに、人間には水分を取ったり、栄養を取ったりする必要があるだろ?」
浮葉は、今とても腹が減っている、と言って笑った。
「もしかして、浮葉の中にいるっていう水の神様?」
年始に初詣に行った、彼の中に生まれたときからいるという神。その正体は浮葉自身もよく知らないようだったが、彼が大切にしているということは知っている。
「そうだ。俺にとってははじめましてではないが、話すのははじめてかもな」
「浮葉の中で意識があったの?」
「まあな。ずっと、浮葉の体を借りて療養していた。彼が生まれて……三十年か。それくらいあれば、まあこれくらいはできるようになる」
療養? と峯田がつぶやく。彼はそれには答えず、蚊鳴屋を見た。
「……さきほど、すまなかったな、帯刀。かばってやれなかった」
「あ、いえ」
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