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第三話 平和な日常
それから一週間。生徒会室に工藤が訪れることはなかった。
「平和だね」
牽制が効いたかな、と薫が笑う。その言葉に美奈は工藤から聞いた一つの話を思い出した。
「そういえば、みっちゃんから聞いたんだけど、なんでも五十嵐に好きな人が出来たらしいよ。それで丸くなったって。取り巻きもいなくなったし、告白されても暴言吐かずに好きな人がいるって断るから泣く女子もほとんどいないんだってさ。人って簡単に変わるものなのね」
「へぇ。恋って偉大だね。土曜日に会った時にはいつもと代わりなかったから日曜日に何かあったのかな」
これで当分は静かに過ごせそうだ、と薫はノートに視線を落とした。だが、薫の言葉に引っかかった美奈がそれを許さない。
「土曜日に? 会った?」
「うん。それがどうかした?」
「もしかして、例のアレで?」
「あぁ。うん。そう。それがどうかした?」
美奈の脳内に一つの仮説が立ち上がる。けれど、これを言うにはまだ早い。もしそうだとしてももう少し遊んでみても面白そうだ。
「いや、なんでもない」
美奈は心の中でニヤリと笑った。
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