第四話 文化祭ー朝ー

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第四話 文化祭ー朝ー

 バタバタと準備に奔走した日々はあっという間に過ぎ去り、遂に当日を迎えた。男子のメイクを担当するのは女子であったが、薫は自分でやることになっていた。元々は美奈がやるはずだったのだが、教室での練習中に色々と口出ししてくる薫に耐えかねて美奈が盛大にキレたのだ。クラスメイトたちがいる前で。そんなに言うならアンタが自分でやればいいでしょ。その言葉に他の女子たちが食いついた。理由は姉のメイクを手伝わされることがあると適当な嘘で誤魔化したが、あっという間に薫がメイクを出来ることが広まった。そして、薫のメイクは自分で担当することとなったのだ。だが、当日になって新たに問題が起こった。五十嵐を担当するはずだった生徒が登校中に事故に遭い、遅刻するとの連絡が入ったのだ。ギリギリで準備の予定を立てていたこともあり、メイクを出来る子は全員時間が無かった。 「僕が引き受けるよ。だから、みんなは自分たちのことに集中して」  名乗りあげたのは、薫である。女子の間に不安が広がる。メイクを出来るということで薫は自分を担当することになったが、まだその手腕が披露されたことは無かった。出来るとはいえ慣れてはない薫がどれほど出来るのか、どれほど時間がかかるのか分からない。だが、美奈が何も言わないのに、薫に何か言える人物はそこにはいなかった。そして、五十嵐のメイクも薫が担当することとなった。
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