第一話 問題児

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 学校の象徴である生徒会長が弱音を吐いているところなど見せられないため、話す声は小声となり、自然と二人の距離も縮まる。凛とした佇まいで距離も近い二人がまさか弱音を吐いている生徒会長を叱咤している副会長などには見えない。こういうところから根も葉もない噂が立つわけだが、二人がそこに思い当たるのはまだ先のことであろう。  生徒会室のある特別棟から教室棟までは渡り廊下一本。さほど遠い距離ではない。他のクラスはもう掃除も終え、ほとんどの生徒が部活だったり下校していたりするため、勉強をしている生徒がちらほら見受けられる程度だったが、問題の教室に近づくにつれ、女生徒の甲高い声が聞こえてくる。そして、その教室の前では、掃除当番なのであろう真面目そうな生徒達が不安げに身を寄せあっていた。そして、薫の姿を認めた途端安堵の息を零した事に薫からはため息が漏れる。今すぐに踵を返したい気分だ。 「ほら、しゃんとしてよね」 「わかってるよ」  意を決して教室へと足を踏み込んだ。美奈は控えるように半歩後ろを続く。  薫たちが教室に入ったことにまず気づいたのは男子生徒の取り巻きの女子たちだった。目の前の男とはまた違うタイプのイケメンに息を呑む。学校一、二のイケメンがここに揃った。この学校の女子人気はこの二人に二分される。いや、周辺校も含め、か。 「アァ? またお前かよ。お忙しいセイトカイチョウサマが見せびらかすみたいに美少女連れてなんのご用ですか?」  嘲笑うかのように投げかけたのは相手の男、この学校の問題児五十嵐圭吾だ。
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