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「なんてね、美奈」
名を呼ばれた美奈が教室に入ってくる。その手にはグラウンドへと投げられたと思っていた五十嵐の鞄があった。
「次は本気でするよ」
「あんまりコイツ怒らせない方がいいわ。普段怒らないやつほど怒った時面倒なのよ」
「……調子乗ってんじゃねぇぞオンナ顔が」
五十嵐は盛大に舌打ちをすると、美奈から鞄を奪い取って教室を出ていく。取り巻きたちもそれを追いかけるようにそそくさと出ていった。
「やりすぎよ」
「これで当分は静かだといいんだけどね」
「そう簡単だといいんだけど…………嬉しそうね。なんなの?」
「僕、女顔だって」
嬉しそうに笑う薫に美奈は呆れたようにため息を零し、掃除道具を渡す。二人が掃除を終えた頃には陽が随分と傾き始めていた――
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