第二話 それぞれの休日

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第二話 それぞれの休日

 ヒラヒラと舞うスカート、ふわふわのフリルやレース、可愛らしいリボン。どれもキラキラと輝いて見えた。初めは母親の手伝いだった。母親の経営する洋服ブランドの女児服のモデルが最初のきっかけだろう。気がつくとそれは僕の趣味になっていた。 「いってきます」  誰もいない広い家に挨拶を投げかけ家を出る。ウキウキと心弾ませて街へと繰り出す美しい少女の正体は、薫である。そう。これこそが彼の最大の秘密なのだ。別に女の子になりたいわけでも、男が恋愛対象なわけでもない。ただ、女性物の服や化粧が好きな女装癖持ちなのである。そして、毎週末、彼は女装をして街に出掛ける。ショッピングをしたり、喫茶店でお茶したりと様々だが、これが楽しみでしかなかった。 「今日はどうしようかなぁ」  スタイルがよく美しいどこからどう見ても完璧な少女である薫はとにかく人目を引く。母譲りのセンスのいい服装もよく似合っており、男女問わず目を向けずにはいられなかった。だが、薫がそれに気づく素振りは一切ない。時折彼に付き合う美奈がいれば呆れてため息を零したことだろう。  新作のコスメと洋服を目的に決めた薫は寄り道をしながら目的地へと向かうことに決めた。
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