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一章 畑にマンドラゴラ
ミュラは広がる畑を眺めてため息を吐いた。
足元には完熟したマンドラゴラが徘徊している。結界が張ってあるとはいえ、なんとも形容しがたい感情が胸に広がる。
――マンドラゴラを栽培する。
アーディのやりたかった畑仕事は、これだったの? そう突っ込まずにはいられない。
「おはようアーディ。今日も畑は元気ね……」
土を耕していた彼は、額の汗をぬぐい振り返る。その表情は生き生きとしていて、今の生活にとても満足しているようだった。
この畑を用意したかいがあったと思うけれど……目の前をとことこと歩いていくマンドラゴラを見ていると複雑な思いだ。
「おはよう。ミュラは相変わらず早起きだな」
童顔の頼りなさげな顔。身長もこの国の民よりも低め。筋肉はあっても基本的に体の線が細く見えるのは昔から。
少女の姿を保っているミュラは、彼を見て苦笑した。
「ねぇアーディ。このマンドラゴラの調査結果なんだけど……どうする? あとでまた来たほうがいいかしら?」
足元をよちよちと歩いているこの特殊な植物を放置して、話し込むわけにはいかないだろうと、ミュラは考える。
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