一章 畑にマンドラゴラ

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 アーディは器用にマンドラゴラを避けながらまっすぐ、ミュラのほうへ歩いてくる。 「いや今でいいけど、それは面倒な話なのか?」 「そうでもないわ。でも――」 「じゃ、今」  この警戒心をどこかに置き忘れたような彼は、相変わらずで出会った頃から変わらない。そして意外と頑固なところがあるところも、変わらない。  ミュラはまたひとつため息を吐いた。 「……わかったわ。本当は情報を内密にしておきたいんだけどね」 「なぜ?」 「あぁ私が悪かったわ。そうね、利益になることを独占するのは良くないわね」  彼が言いたいのはつまり、そういうこと。  本当なら情報や利益を独占して、他国間との交渉に使えば有効だろうと思う。けれどアーディはそれを極度に嫌う。  栽培するといっても、元は野生しているものの苗を採取して栽培している。  これは自然にあるもので、人が独占して良いものではない。 「じゃあ、簡潔に言うわ。ここで栽培しているマンドラゴラの成分は、野生しているものと成分が異なるわ。このままでは弱い」 「使えるか?」 「調合次第では可能よ。でもこの手間を考えたら、探索で採取してきたほうがいいんじゃないの?」     
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