一章 畑にマンドラゴラ

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 誰でも栽培できるものじゃない。この結界は強めにして張っている。だからこそ収穫するときのマンドラゴラの悲鳴が街に届かない。  けれど、この状態をどこでも再現可能かと聞かれたら、出来ないと答えるしかない。それほどに、この栽培自体が無謀で計画性があるのかどうか……それさえも疑わしい。 「ミュラにはミュラの考えがあると思う。けど、野生で採取できるものは限度がある。採り尽くせば多方面で歪みが出るだろう。そうじゃなくてもこの国で採取してこられる者は限られていて、人員が足りない」 「志願者を募っても、人がいないんじゃ仕方ないわね。だからと言って、報酬を上げれば生態系を歪ませる程度に採り尽くす可能性もある……。難しいわ」  だからアーディは栽培をしてみたいと言い出したのかと、やっと理解できた。てっきりいつもの興味本位かとミュラは勘違いしていた。  今は資源も薬草も不足はしていない。  しかしアーディの言う通り採取できる人員確保は期待できないだろう。  この国は独立し、建国したばかり。  まだまだ安定するには遠くて、隙を見せれば他国の侵入がたやすくなる時期。 「ミュラ、いつも助かっているよ。だけど俺たちは争いを避け守らなきゃいけないものがあるんだ。この国の代表として俺はここにいる。本意ではないけど、責任がある。生きなきゃいけないんだ」     
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